自民党憲法草案の条文解説掲示板

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改憲案の解説について - 匿名希望

2013/07/20 (Sat) 16:16:12

現在都内の大学の法学部生として、大学院への進学を考えている者です。
このような試みを丁寧になさったことにたいへん感服するとともに、いくつか気になった点について、同じく法を学ぶものとしていくつか指摘したく、コメントすることにいたしました。
不勉強ながら、参考になれば幸いです。

・人権について
 人権を従来のような自然権とは異なり、憲法上の権利として捉えると言う試みがあり、改憲案はそれを受けたものではないかと考えられます。あまりこの議論について正確な言い方ができないので、詳しくは高橋和之の『立憲主義と日本国憲法』などを参照していただきたいのですが、憲法上の権利という言い方を憲法がした時に、人間が前国家的性格を持つ自然権を認めていないということにはならないのではないかと思います。

・公共の福祉について
 公共の福祉が「公益及び公共の秩序」という文言に置き換わっていることについても、公共の福祉について一元的内在的制約説を前提として人権相互間の衝突の調和と考えた場合、およそ個人の人権と考えることが適当でないことまで人権として位置づける必要が生じ、かえって人権のインフレ化を防ぐと言う批判があったと思います。これの解決のため、上記の高橋によれば、公共の利益であっても、個人に還元され、享受可能なものであれば、公共の福祉に含まれるといった言い方をしていたように思います。改憲案は、こうした考えを反映したものと考えることはできないでしょうか。

・政教分離について
 政教分離を厳格に解する判例変更が困難になったことは妥当であると思うのですが、あくまで判例の目的効果基準を明確化したしたものにとどまり、これをもって直ちに政教分離が緩やかに解されると言うことはできないように思います。また、玉串料について、立案者の意思はさておき、規定ぶりからは判決が覆さることにはならないと思うのですが、いかかでしょうか。

・国家の国政に対する説明義務について
 国家に対する知る権利は、表現の自由と表裏一体となる知る自由と国民主権原理により抽象的な請求権として認められているものであり、具体的立法により初めて具体的請求権になると考えられていると思います。草案第21条の2は、この知る権利を国家の義務として抽象的に規定したものと考えることができるのではないでしょうか。また、国民の知る権利は、通説的理解からも、具体的な立法がなければ法律上の権利として主張できないように思います。
 これについては、国民の知る権利として規定を置いた場合、所謂ベースライン論の考え方から、国民の知る権利という請求権に強い性格が付与されることを避けるため、国家の責務として規定したにとどまると考えられるのではないでしょうか。

・居住・移転の自由について
 外国人の出国の自由は、国際慣習法上認められたものであるから、これを日本国憲法において規定する意義に乏しいと考えたのではないでしょうか。

・環境保全の債務について
 国が国民の協力なくして草案第25条の2の責務を果たせなくなるからといって、国民に義務が認められるということには論理的必然性が認められないように思います。国民の環境権について、請求権の性格を弱いものにとどめるという目的があるのではないかということについては、上記の知る権利と同様です。

・財産権について
 権利には何が権利として認めらるかと、その権利にどういった効果が認められるかの二つの相があると考えられると思います。すなわち、何が知的財産権であるかと、知的財産権にどういった効力が認められるかということとでは対象が異なるため、草案第29条2項後段をもって、「国民の知的想像力の向上に資」しないと判断されると知的財産権に含まれないと言い切ることは出来ないのではないでしょうか。

・内閣の職務について
 罰則は一種の義務付加行為なので、草案第73条6項の「義務を課し」に罰則は含まれているように思います。

・地方自治について
 草案第97条について指摘されている、住民の権利義務にかかわらない事実上の不平等・不利益を生じさせるような法律で、同条前段には当たらない場合とはどのようなものが考えられますか?

・改正について
 草案第100条2項の「承認」は誤記ではないように思われます。というのも、同項に言う承認は、国民の憲法改正に対する承認であって、天皇の国事行為に対する現行憲法で言うところの承認とは異なるためです。

以上です。長い文をお読みいただきありがとうございました。

Re: 改憲案の解説について - satlaws

2013/07/20 (Sat) 17:17:35

・人権について
 ご指摘の解釈自体は可能だと思いますが、そのことが自民党の考え方に関する私の記述とどう矛盾するのかが、すみませんがよくわかりません。

・公共の福祉について
 改憲案が個人の尊重に立脚していないためご指摘の見解を維持することが困難であると思われる点、改憲案は判例変更まで意図していることを起草者が明らかにしている点につき、サイトに記載してある通りです。

・政教分離について
 書いてなかったものを書いたという改正の趣旨が考慮される旨サイトで指摘させていただいています。行訴法改正後の解釈などと同様です。
 愛媛玉串料違憲判決が絶対に覆されることになるとは言えないのはおっしゃる通りですね。Q&Aが断言している内容を前提とすれば判例変更される、という趣旨の記述だとご理解ください。時間があったら加筆します。

・国家の国政に対する説明義務について
 21条の2の文言が国民の権利と読めますか?
 具体化立法が必要なのはおっしゃる通りですが、私が書いているのは、具体化立法を否定すると自民党が言っているということです。

・居住・移転の自由について
 おっしゃる通りの解釈が可能であることは否定しませんが、私が書いているのは2項で保障されるとする判例通説に反して2項の対象から外したということなので、あまりかみ合っていません。仮に、2項で保障されるというのが通説ではないのではないかという批判であれば、それは私の勉強不足かもしれません。

・環境保全の債務について
 25条の2に対しても国民に憲法尊重義務がかかっていることを基礎にしています。もちろん具体化立法を待ってということですが。

・財産権について
 知的財産権に含まれないと言い切っていません。

・内閣の職務について
 罰則を設けることによって義務は賦課されませんよね?賦課されるという考え方があるのですか?

・地方自治について
 実例がないのでわかりませんが、例えば沖縄が優先的に基地を受け入れます的な法律ではないでしょうか。

・改正について
 主語である天皇が、国民の承認を経て行為をしますよね。国民の承認がなければ行為できません。内閣の承認で天皇が行為するのが失礼だと考えるのであれば同様に失礼だと考えるものと思いますが、私自身は失礼だと思わないのでもしかしたら的外れなことを言っているのかもしれません。

Re: 改憲案の解説について - 匿名希望

2013/07/21 (Sun) 01:33:30

迅速な解答まことにありがとうございます。
返信により納得のいった点、なおこちらの説明が不足していたと考えられる点がいくつかございましたので、補足させていただきます。

・人権について
 人権の考え方について整理して、機会があれば改めてご報告させていただければと思います(すいません)。

・公共の福祉について
・政教分離について
 自民党の用意しているQ&Aを通読していなかったため、生じた疑問でした。ご指摘いただいた通りだと思います。

・国家の国政に対する説明義務について
 具体的立法を否定するという意味があまり分からず恐縮なのですが、それは既に存在する情報公開法を廃止する方向にはたらくということでしょうか?
草案第21条の2は、確かに国民の強い請求権として知る権利を憲法上保障するには至っていないと言うことができると思いますが、この規定は情報公開法第1条と同一のものと言えるのではないでしょうか。
 あまり説明がうまくなく恐縮なのですが、仮に知る権利が強い請求権として憲法上保障された場合、国民はこれを根拠に国家に立法請求権という作為請求権を有すると考えられます。一方で、知る権利が国の責務として規定されるにとどまり、弱い請求権に留まる(憲法上明文によっては保障されていない)場合、国民は立法請求権を持たず、法律による具体化がなされてはじめて、その法律の解釈・適用にあたり憲法適合的な解釈を求めることができるにとどまることになります。

 おそらく、国の責務として説明義務を規定した場合、国民には知る権利が認められていないという言い方をなさっていると思われるのですが(間違っていたらすいません)、認められていない、とは、積極的に否定されているのではなく、あくまで積極的に肯定はされていないものにすぎないということです(国の責務が規定された場合、責務が単独で生じることはおよそありえないと考えれば、国民は国家に対して義務履行請求権を有すると解することが自然だと思います)。
 この請求権としての強弱については、木村草太『憲法の急所』44頁以下をお読みいただければ、もう少し上手な説明がなされていると思いますので、そちらを参照していただければ幸いです。

・居住・移転の自由について
 おっしゃる考え方が判例(最判昭和32年12月25日)・通説であることはご指摘いただいた通りです。もっとも、外国人の出国の自由の根拠を国際慣習法に求めると言う学説もまた存在するようです(芦部・憲法〔第5版〕95頁参照)。

・財産権について
 説明不足でした。むしろ、草案第29条3項の文言からすれば、何が知的財産権に含まれるか(≠知的財産権の効力は何か)を判断するにあたり、同項後段の事由は考慮されないはずではないか、ということです。

・内閣の職務について
 これは僕の説明が誤っていました。
 改めて説明せていただくと、罰とは、国民の生命・身体・財産に対し一定の制限を加えることであり、これを定める罰則(現行憲法73条6号)とは、草案第73条6号に言う「義務を課し、又は権利を制限する規定」と同義であるということです。

・地方自治について
 せっかく具体例を考えていただいて恐縮なのですが、その具体例の場合、沖縄県が優先的に基地を受け容れるという点で、基地の受け入れについて沖縄県民には他県の住民と比べて重い受忍義務が課されることになり、その限りで草案第97条に言う「特定の地方自治体の住民にのみ義務を課し、権利を制限する」ものになるのではないでしょうか。

・改正について
 繰り返しになってしまうようで恐縮なのですが、国民の承認は憲法改正に向けられるものであって、天皇の憲法改正の公布という国事行為に向けられたものではないと思われます。
実際に草案第100条1項に従って憲法改正がなされる場合には、要件を満たす発議ののち国民投票が行われ、国民投票で過半数の賛成、すなわち承認があったのち、内閣が天皇の憲法改正の公布という国事行為について進言(現行憲法で言うところの、承認)をして、天皇がこれに基づいて改正を公布する、という過程を経るのではないでしょうか。

Re: 改憲案の解説について - satlaws

2013/07/21 (Sun) 03:52:19

・国家の国政に対する説明義務について
 条文の文言自体が「既に存在する情報公開法を廃止する方向にはたらく」わけではないのはおっしゃる通りですし、私もそういう話は書いておりません。「Q&Aによれば自民党が情報公開法を廃止しようと考えているといえる」という話をしています。

・財産権について
 29条2項前段でしょうか?財産権の内容を法律で定めるにあたり後段を考慮するという規定になっています。

・内閣の職務について
 罰が義務であるとして、それは条例の制定の段階で課されるものではありません。

・地方自治について
 そのように権利義務を非常に広くとらえるならば義務に含まれると言うことができますが、他の地域より「重い受忍義務」で適用されるとすると適用範囲が無限に広がり現実的でないのではないでしょうか。

・改正について
 おっしゃる通りの違いがあると思いますが、そのことで失礼か否かが決せられるのでしょうか。失礼さは分析的にみてワンクッションあるからOKというようなものではなく感覚的なものだと思うのですが、いずれにしろ法的な議論ではないのでどうしようもありませんね笑。この話題をサイトに記載しておくことにほとんど意味がない気がするので削除することにします。ありがとうございます。

Re: 改憲案の解説について - 匿名希望

2013/07/21 (Sun) 19:55:00

再びのご返信ありがとうございます。

・説明義務について
 了解いたしました。

・財産権について
 「財産権の内容」とは、財産権について「何が財産権であるか」と「財産権にはどういった効力が認められるか」の2つに分けた場合、後者のみをさすと考えられるから、前者である「何が知的財産権であるか」を判断するにあたり草案第29条2項後段は考慮されないのではないかということです。
 むしろ、同項後段の立法事実は、立法者意思を合理的に解釈するのであれば、知的財産権の効力(後者)が、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならないということではないでしょうか。すなわち、知的財産権に過度な効力を認めること(たとえば、現在学術目的や教育目的など一定の場合には著作物を利用できたと思うのですが、それすらも制限するような立法をすること)を防ぐ趣旨であると考えられます。

・内閣の職務について
 コメントでは「73条6号で、権利制限・義務賦課はできないこととした一方で、罰則は設けられるようになったという条文になっています」と指摘されていますが、罰則が権利制限・義務不可の規定と同義である以上、罰則が設けられるようにはなっていないということです。

・地方自治について
 無限に広がる、という意味があまりよく分からないのですが、草案に言う「権利義務」を広く捉えることにより、現行憲法の対応する規定と意味するところは変わらないと考えられないでしょうか。

Re: 改憲案の解説について - satlaws

2013/07/21 (Sun) 21:27:55

・財産権について
 29条2項が後者のみ指すと考える理由、私が前者の話をしていると考える理由がいずれも不明です。

・内閣の職務について
 繰り返しになりますが「罰則が権利制限・義務不可の規定と同義である以上」という前提が違うと言っています。刑罰が「義務」だとしたら罰則の制定によって課されるのではなく判決によって課されます。

・地方自治について
 繰り返しになりますが広く捉えることが困難だと言っています。草案では全国に適用される法律でも含まれ得るわけですから、普通に全国に適用される法律の中である地域の「受忍義務」がほかの地域より強くなる法律なんて無数にある上に区別や範囲の画定がほとんど不可能ですよね。

Re: 改憲案の解説について - 匿名希望

2013/07/22 (Mon) 00:24:22

・財産権について
 現行憲法第29条2項が先の投稿に言う後者をさすと考えられる根拠には、この条項が問題となった森林法事件(最判昭和62年4月22日)が挙げられると思います。この事件では、通常であれば共有持分権者は共有物のは分割請求が可能であるところ、共有林については分割制限が法律により課されていたことの合憲性が問題となった事件です。そこで問われているのは、共有林持分権者は、その権利に基づいてどのような請求をすることが可能かということであり、何が「共有林の持分権」であるかということではありません。このことから、同項は後者、すなわち財産ルールをさすものと考えられます(これについては、木村・急所184頁以下もご参照ください)。
 もっとも、コメントが前者の話をしているということについては、「保護されない」という文言を、「知的財産権に含まれない」と解したことによるものであるところ、これは読み方として可能ではあるが、論理必然的であったり、その他十分な根拠のあるものではありませんでした。

・内閣の職務について
 僕の説明が不十分なためか話がすれ違っているように感じるところではありますが、もう一度説明させてください。
 刑罰とは「犯罪に対する法律上の効果として行為者に科される法益の剥奪(制裁)を内容とした処分」を言うと解される(有斐閣法律学小事典をご参照ください)ところ、法益の剥奪とは、具体的には生命刑・自由刑・財産刑のことであり、これにより行為者は自身の生命・身体・財産という権利を制限されるという点で、「刑罰を科す」ことは「義務を課す」ことになります(本当は、「権利を制限する」と行った方が正確であるように思われますが、刑の執行は国家の刑罰権の発動であり、この刑罰権には対応する義務が存在することを考えれば、同一のものであると言ってよいでしょう)。
一方で、罰則とは、「刑罰又は過料を科する旨を定めた"規定"」であるところ(過料については、罰金や科料と厳密には異なるのですが、ここでは金銭罰という性質を共通するものとして敢えて取り上げないことにしたいと思います)、これと上とを合わせると、罰則とは、「義務を課す規定」であると言えます。
 そして、草案第73条6号但書は「政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない」と定めているところ、以上の議論によれば罰則は「義務を課[す]...規定」に含まれるため、草案においてもなお政令により罰則を設けることはできないことになります。

・地方自治について
 考え直してみたところ、僕の方に誤りがあったように思います。
例えば、「沖縄県民が同県内において建築物を建築しようとする場合、内閣総理大臣は、右建築物の建築について、適切な指導をすることができる」という行政指導を定める立法がなされた場合、現行憲法ではこれも住民投票の対象となるのに対し、行政指導が一般に法的関係を変動させるものではないと解されていることからすれば、このような不利益は事実上のものに留まるため、草案では確かに対象となりません。
思いつきなのでなお議論に穴のあるところかもしれないですが、これについてはコメントの趣旨を理解できました。
(なお、どうでもよいことですが、現行憲法では特定の地方公共団体の住民にのみ給付をする場合にも住民投票が必要となるのに対し、草案ではこのような場合住民投票が不要になると言う違いがあるのですね。実際問題として、給付を拒むことはあまり考えられないので、あまり意味のあるところではありませんが)

P.S.
・知る権利について
 Q&Aを読んだところ、国政上の行為に関する国による国民への説明の責務に関する説明では「国民の「知る権利」の保障に資することとしました」という記述しかなく、この記述を前提にすると自民党が国民の知る権利を法律のレベルで保障した情報公開法を廃止しているとはおよそ考えられないと思うのですが、そのような見解はどの部分に基づくものでしょうか。

Re: 改憲案の解説について - satlaws

2013/07/22 (Mon) 00:54:28

・森林法事件が後者の話であることは明らかですが、そのことがなぜ前者が含まれない理由になるのでしょうか。

・「A県の住民は、懲役1年に処する。」などという罰則を前提としているのだとすればそのご主張は理解できます。

・私が「」で引用しているのは言うまでもなくQ&Aの記述です。

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